植物の防御応答(植物免疫)

植物にカビやウイルスなどの病原体が感染すると、植物細胞内では植物ホルモン(サリチル酸:SA、ジャスモン酸:JA、エチレン:ETなど)を 中心に多様な遺伝子がダイナミックに発現し、防御応答(植物免疫、抵抗性)が発動します。

植物ホルモンのうち、サリチル酸は活物寄生性病原菌に、ジャスモン酸・エチレンは腐生性病原菌や 害虫に対する防御応答を活性化することが知られています(Fig. 1)。防御応答では、自発的細胞死によって病原体を植物細胞内に封じ込め、 抗菌物質の生産によって病原体拡散を防止し、細胞壁を厚くしてさらなる感染を防ぐことで免疫力を発揮します。植物活性化剤(抵抗性誘導剤)は、 これらの防御応答を疑似的に発動させ、植物本来が持っている免疫力を高める薬剤です。

植物活性化剤(抵抗性誘導剤)

植物活性化剤(抵抗性誘導剤)の一番の特徴は、直接的な殺菌・殺虫活性がなく、植物そのものの免疫力を高めることにあります。 そのため、特定の病原体だけでなく多様な病原体に効果を示す可能性が高く、また薬剤耐性菌出現のリスクが低く効果が持続します。
Meiji Seika ファルマ(株)のプロベナゾール(商品名:オリゼメート他)は既に40年使用されていますが、耐性菌の問題はありません。 さらに、防除目的以外の生物に対する影響も少ないため、生物農薬を用いる総合的病害虫管理(IPM:Integrated Pest Management) にも適しており、未来の環境調和型農業に貢献できる薬剤として期待されています。

植物活性化剤(抵抗性誘導剤)の種類

現在日本で農薬登録されている農薬有効成分約560種のうち植物活性化剤(抵抗性誘導剤)は3種のみです(2015年4月:Table 1)。 これら3種は、用途として殺菌剤あるいは殺虫殺菌剤に分類されています。植物活性化剤(抵抗性誘導剤)のスクリーニングは、 一般的な農薬である殺菌剤等とは異なり、植物そのものの免疫力を指標とするために手間と時間を要し、 圧倒的に登録数が少ないのが現状です。またこれまでに開発された4種は、全てサリチル酸を介した防御応答経路を 活性化するものです(Fig. 1)。

横浜バイオテクノロジーは、独自の遺伝子発現モニタリング技術を駆使して、 サリチル酸経路以外にもジャスモン酸経路をターゲットとした迅速な植物活性化剤(抵抗性誘導剤)のスクリーニングをお手伝いします。
農薬登録年 開発会社 薬剤名 商品名
1974年 明治製菓
(現Meiji Seika ファルマ)
プロベナゾール オリゼメート
1998年
2006年登録失効中
チバ・ガイギー
(現シンジェンタ)
アシベンゾラルSメチル バイオン
2003年 日本農薬 チアジニル ブイゲット
2010年 バイエルクロップサイエンス イソチアニル ルーチン
Table 1登録されている植物活性化剤(抵抗性誘導剤)